三宅島2000年噴火・火山ガス長距離輸送


2000年の三宅島噴火について、衛星画像や気象データ、噴煙観測情報などを基に、 噴煙の高度やメソスケールの火山ガスの輸送について解析した結果を示します。
  • 三宅島および周辺の高層気象観測点と国設大気測定局の位置



  • 熱赤外差画像
  • スプリットウィンドウ(split-window)バンドとよばれる11ミクロンと12ミクロン の熱赤外差画像は鉱物質エアロゾルを検出するのに非常に有効である。 この検出アルゴリズムは大気中の水蒸気量を推定するために開発された スプリットウィンドウ法に基づいている。ある波長よりも短い粒子サイズをもつ 火山性硫酸エアロゾルや石英物質は、11ミクロンと12ミクロン帯における 氷晶や水滴とは反対の消散特性を持つこと利用し、火山灰煙の検出に適用している。

  • 鉛直シヤーモデル(VSM)
  • 鉛直シヤーモデルでの噴煙放出は一定時間一定強度で続き、噴煙は放出された等圧面上 を移流しつづける理想粒子であると仮定し、乱流拡散及び重力の効果は無視する。 つまり、噴煙の移流拡散形態は噴煙の放出高度と高層風の鉛直シヤーによってのみ規定 されると仮定する。理想粒子は指定された等圧面ごとに、1時間に1個の粒子が火口上空 に放出される。放出された粒子は、もっとも近い高層気象観測点の高層風、もしくは 隣り合う観測点(噴煙の移流方向によって決定する)との距離の逆二乗で 重み付けして合成したベクトル風によって、次の位置が決定される。 すなわち流跡線を計算する。しかし、衛星画像で可視化された噴煙はある時刻の スナップショットであり、流脈線に相当する。そこで、本モデルでは、気圧面ごとに 各時刻の粒子の位置を配列に格納して保存し、シミュレーション開始時から終了時まで 放出された全粒子について、シミュレーション終了時刻(衛星観測時刻)の位置を プロットすることで噴煙の流脈線を表現している。

    1. 爆発噴煙−2000年8月18日−
    2. 爆発噴煙−2000年8月29日−
    3. 長距離輸送−関東(2000年8月28日〜29日)−
    4. 長距離輸送−中部(2000年9月13日〜15日)−

    爆発噴煙−2000年8月18日−

    ・静止気象衛星GMS-5熱赤外差画像に観る噴煙の拡がり


    ・19時のGMS-5熱赤外差画像とVSMシミュレーション結果


     2000年8月18日17:02に爆発噴火が発生した。成田へ向かう数機の航空機が この爆発噴煙と遭遇したことが報告されている。三宅島から南東方向において、 その中の一つのB747航空機は18:30に高度約10.4km(FL340)、B737航空機は 18:32に高度約11km(FL360)で灰煙と遭遇した。
     18時〜24時のGMS熱赤外差画像では、噴煙が北と南東に向かって拡散していく 様子が捉えられている。
     八丈島の高層風を用いて求めた流脈線図から、925hPa〜500hPaの低高度の噴煙 が北に拡がり、それより上層の150hPaまでの噴煙が南東方向に拡がっていった ことがわかる。流脈線図では、9700〜12500mにあたる200,250,300hPaの プロットを大円で示している。この高度のプロットは、航空機の灰煙遭遇 レポートとよく一致している。

    爆発噴煙−2000年8月29日−


     2000年8月29日04:35の爆発噴火の最高高度は06:28に8000mであったと報告されている。 左の図は同日5:28のNOAA-12/AVHRRの熱赤外差画像である。東京VAACの内部レポート によると、05:38に噴煙は5800m以上に到達していたと報告されている。
     NOAAの熱赤外画像をみると、爆発噴煙は拡散前のパフ状であり、不透明であると 考えられる。11ミクロン帯のデータより、最低温度(高度最高点)は261.8Kである。 右図の八丈島における同日9時の高度−温度プロファイルより、噴煙高度はおよそ6576m と求められる。
     ここで、衛星画像の熱赤外データから噴煙高度を求める場合には、噴煙高度より上層に 存在する水蒸気と噴煙の放射率の影響を考慮する必要がある。いま、噴煙高度は6000m程度 であり、水蒸気の影響は無視できる。放射率を0.9〜0.95とすると、噴煙高度は5920〜6250m と見積もられる。この値は東京VAACの報告値に大変近い。

    長距離輸送−関東(2000年8月28日〜29日)−


    左:8月29日16:46のNOAA-12/AVHRR画像。可視、近赤外、中間赤外バンドを それぞれR、G、Bに割り当てたカラー画像を白黒化している
    中央:八丈島と館野の高層風で空間内挿して求めたVSM流脈線図 (800〜3000m、8/28 21JST〜8/29 17JST)。
    右:2000年8月28日〜29日の国設大気測定局におけるSO2濃度

     2000年8月28日と29日の日中に、関東でバックグラウンド値よりも明らかに高い SO2濃度が観測された。 東京都では、SO2の環境基準である1時間値100 ppbを超える167 ppbを 29日の10時に記録している。 すべての局のピーク値が日中の10時〜12時に記録されている。この日は関東地方は 高気圧に覆われており、日中は対流混合により高濃度が引き起こされたと思われる。 衛星画像、流脈線図からもこのことは支持される。

    長距離輸送−中部(2000年9月13日〜15日)−


    左:9月15日15:53のNOAA-14/AVHRR画像。可視、近赤外、中間赤外バンドを それぞれR、G、Bに割り当てたカラー画像を白黒化している
    中央:八丈島と浜松の高層風を空間内挿して求めた流脈線図 (800〜2500m、9/14 22JST〜9/15 16JST)。
    右:2000年9月13日〜17日の国設大気測定局におけるSO2濃度

    名古屋では9月13日の昼ごろから高濃度になり、9月15日の10時にはこの期間最高の 336 ppbを記録した。同じような高濃度SO2は、京都や中部地方の多くの 大気測定局においても観測されている。この間の気圧状況はほとんど変化せず、 九州の西に位置する台風14号が非常にゆっくりと北進し、前線が日本海に停滞していた。 高度1000 m付近は東北東の風が関東から中部地方に向かって吹いていた。 三宅島の火山ガスが中部地方へ扇形状に流れていく様子は衛星画像や流脈線図で見られ、 このガスの輸送が中部地方で観測された高濃度事象をよく説明している。



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